学芸会が迫った教室は、稽古のために机が乱雑に隅に押しやられている。
文化の日が近づいた空は、空っ風が吹いて寒々としている。もう冬が来るのだ。
練習に飽き飽きした子どもたちは、先生の見ていない隙を見計らって、ちょっかいをかけあっている。
こそこそ話をする女子。お下品な言葉を言ってげらげら笑う男子。
仲良しのSちゃんは小柄で、茶色に透き通る大きな瞳が可愛らしい女の子だ。
まつ毛がくるっと上を向いていて、教室の中を照らす夕日に細めた瞼は、うっすら二重の線がついている。
遅生まれの彼女は、どことなくあどけない。
少しくせ毛のショートヘアは、小さな顔をさらに小さく見せている。
クラスの男子は、そんなSちゃんにちょっかいをかけたがる。
Sちゃんは嫌がっているけど、いじめている男子はなんだか恥ずかしそうで嬉しそう。
胸の奥に一瞬、黒々とした煙が渦を巻いて通り過ぎる。
「先生、Sちゃんは顔が可愛いからみんなにモテるんでしょう?」
不意に国語の先生にこんなことを聞いてしまった。
聞いてからものすごく恥ずかしくなって、なんだか大きな失敗をしたみたいな気分になる。
先生は微笑みながら言った。
「人間顔じゃないんだよ。今にきっと分かるよ。」
私はそのとき、先生は嘘をついていると思った。
じゃあどうして男子は私に話しかけてくれないの。
きっと私は可愛くないんだわ。
私はSちゃんとは違うんだわ・・・
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絶世の美女でない限り、幼少時代のこういう思い出は多かれ少なかれあるのではないでしょうか。
今だから思います。
先生が言っていたことは本当なのかも。
美人は得します。これは明白であり、そんなに美人じゃない私からすると、正直不公平です。
でも最近思うのは、「美」というものはあらゆる面から磨かれるということ。
きれいな字を書く、料理をおいしく盛り付ける、正しい言葉を使う、部屋を清潔に保つ、自分に似合う服を着る、体の状態を整える、知識をつけるために勉強する、先人の残した芸術作品に触れる、自然を愛する・・・
身の回りのあらゆることに対して「美しい」「きれい」という感覚を持つ。それが少しずつ集まれば、女性らしい柔らかさやうっとりするような上品な所作、優しい表情が生まれてくるのではないでしょうか。
そしてそれは外見だけでなく、心のゆとりにもつながると思うんです。
品格のある大人の女性は、知的で魅力的。
私の場合、歯並びも直して、ステキな笑顔の持ち主になりたいです!
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